ダウニング街10番のレンガに見る英国建築の美学
- キャン’エンタープライゼズ株式会社

- 5月13日
- 読了時間: 3分
更新日:6月9日
ダウニング街10番のレンガ壁
― 黄色いレンガから漆黒の装いへ、Tuck Pointingに宿る技術と文化 ―
歴史が息づく玄関口

ロンドン、ダウニング街10番といえば、英国首相官邸として世界的に知られる歴史的建造物です。ジョージ王朝様式を代表するその外観は、幾度となく改修されながらも威厳を保ち続けており、特に印象的なのが、シンボリックな黒いレンガ壁です。
元々は黄色いレンガだった?濃紺のレンガ?
驚くべきことに、ダウニング街10番地は、当初は明るい黄色がかったレンガで建てられていました。これは18世紀当時、ロンドン周辺で一般的に使用されていた「ロンドンストックブリック」と呼ばれるタイプで、独特の温かみを持つレンガです。

しかし、時代が進むにつれて排気ガスなどの汚れが表面に付着し、レンガの色は現在のような黒ずんだ外観へと変化していきました。その見た目が逆に評価されるようになり、汚れが目立ちにくいという理由からも、やがてオリジナルの色味を踏襲した黒い塗装が施されるようになります。この漆黒の外装は、現在ではダウニング街10番地のアイデンティティとなっています。なお、この色はしばしば「濃紺」と誤解されることもあります。
補修を美しさに変える ― Tuck Pointingという技
ダウニング街10番のユニークな外観を実現した技術のひとつが、「Tuck Pointing(タックポイント仕上げ)」です。
通常の目地の上から色の異なる細い目地線(fillet)を描くことで、細く繊細で直線的な目地を擬似的に再現する技術です。元の素材を活かしつつ、より現代的に綺麗に見せる。欧米諸国の建物を壊すことなくリモデルする文化の片鱗を感じる技術です。

特に、黒く塗られた壁面に対して白いフィレットを加えることで、見た目には非常にシャープで高精度な積みレンガのように見せることができます。実際の目地の精度や風化の影響をうまく隠しつつ、視覚的な美しさを最大化する工夫なのです。
英国建築におけるTuck Pointingの意味
英国では19世紀初頭を中心に、都市の建物にこのTuck Pointing技法が数多く導入されました。レンガを規則正しく積むことが難しかった時代において、この技法は職人の技術力を象徴する装飾的処理であり、また市民の建築美へのこだわりを示すものでした。
現在ではその文化的価値が再評価され、保守的な歴史建築だけでなく、新築においてもデザイン要素として応用されるようになっています。
当社のブリックタイルでダウニング街10番の雰囲気を再現
通常目地幅13mm程度のところから、目地幅7mm程度と細めに設定することで、ダウニング街10番の雰囲気に近づきます。
使用ブリック:BK-5(目地幅7mm)目地色:ホワイト(左画像)、ライトグレー(右画像)











